暗号通貨という常に揺れ動く世界の中で、MYXトークンの最近の爆発的な上昇ほど混沌を象徴する話は少ない。ゲーム理論に関する鋭い見解で知られる業界ベテランのJordi Alexanderは、最近X(旧Twitter)で暗号界の「crime season」と見なしている最新の事例を糾弾した。threadでは、MYXトークンのばかげた上昇と、主要取引所におけるperpetual futures(通称:perps)が抱える構造的問題に光を当てている。
perpetual futuresは、満期日がないまま資産の値動きに賭けられるデリバティブ契約だ。ポジションをレバレッジで拡大できるため暗号市場で人気がある——つまり借りた資金で利益(または損失)を増幅できる。しかし、Alexanderが指摘するように、裏にある現物(スポット)市場の流動性が欠けていると状況は悲惨になり得る。流動性とは簡単に言えば、価格を大きく動かさずに資産を売買できる度合いだ。
MYX Financeはそのトークンの背後にあるプロジェクトで、オンチェーンのperpetual contractsに特化した分散型取引所(DEX)だ。許可不要の取引でスリッページゼロを謳い、Sequoia、Consensys、Hack VCといった著名な投資家の支援も受けている。プラットフォームはmyx.financeで確認できる。これらの実績があるにもかかわらず、AlexanderはMYXを主要なティア1やティア2の取引所における大きな現物上場がない「ランダムなトークン」と表現している。それでもCoinMarketCapの最近のデータによれば、完全希釈後評価(FDV)は約140億ドルと気が遠くなる数字になっている(CoinMarketCap参照)。
上のチャートはAlexanderの投稿で共有されたもので、Bitgetのスポット市場でのトークンの放物線的な上昇を示している。ほぼゼロから、MYXは急騰し、24時間で約295%以上上昇して約14.12ドルに達した。このため取引高は膨大になり、直近24時間で7.14億ドル超の売買があり、時価総額は約27.8億ドル付近にある。ただし、総供給が10億トークンのうち流通量が約1.97億トークンしかないため、FDVは140.13億ドルに膨れ上がる。
Alexanderの主な不満は何か?Binanceではオープンインタレスト(未決済のperp契約の総額)が2億ドルあり、その多くがマイナスのfunding ratesを支払っているポジションに貼り付いているという点だ。funding ratesはperp価格を現物価格に近づけるためにロングとショート間で定期的に支払われる金銭だ。マイナスのレートはショートがロングに支払っていることを意味し、過熱した市場の兆候になり得る。スポット流動性が薄いと、トレーダーはポジションを大きなスリッページなしに解消できず、Alexanderが言うところの「ユーザーが洗いざらいにされる(getting rinsed)」事態になる。
彼は、BinanceやBybitのような取引所が90億ドルの取引量から何千万ドルもの手数料を稼ぎつつ、顧客が損失を被っていると主張する。「スポット流動性がなければperpsは本質的に不健全だ」と彼は警告する。これは新しい問題ではなく、他の過熱したトークンでも同様のシナリオは繰り返されてきた――しかしAlexanderは、取引所が学ぶか、それとも「カジノで泣くな(don't cry in the casino)」と切り捨てるだけなのか疑問を呈している。
彼の投稿への返信も同様の感想を反映している。あるユーザーはSEELEのような昔の「crime coins」に例え、内部関係者による供給の強力なコントロールを示唆した。別のユーザーはHyperliquidのようなプラットフォームへ乗り換える冗談を言うが、Alexanderは「違いはない」と反論する。VCに支えられた空間であっても、ミームのようなポンプは脆弱性を露呈するという厳しい現実だ。
ミームトークン愛好家やブロックチェーン実務者にとって、このMYXの一連の出来事はデューデリジェンスの重要性を再確認させる。トークンの急騰は短期の売買をそそるかもしれないが、堅牢なスポット市場の欠如はperpsを罠に変えかねない。Alexanderが示唆するように、取引所がこれらの不均衡に対処するまでは、過熱→搾取→繰り返しのサイクルが続くだろう。
もしミームトークンやDeFi perpsに踏み込むなら、CoinGeckoのようなツールでリアルタイムのデータを追うとよい。情報を常に更新し、賢くトレードすることを忘れずに。暗号の世界では、game theoryは単なる理論ではなく、生き残るための知識なのだ。