暗号資産の世界は一晩でプロジェクトの命運が変わるほど変動が激しいが、Terminal Financeはここで大きな成果を見せた。2025年10月11日、市場を揺るがした大規模な清算が発生する中、このDeFiプロトコルは踏みとどまり、Total Value Locked (TVL) が驚異の2億ドルに達した。これはユーザーがプラットフォームに預けた資産の総額であり、コミュニティからの信任の票とも言える。そして同日に、株式トークン化のための新たなERC標準を構築することを目指し、Securitizeとの提携を発表した。これは単なる話題作りにとどまらず、BlackRockの46億ドル規模のRWA(Real-World Assets)パートナーシップや、安定を提供するEthenaの支援、さらに12月に予定されるToken Generation Event (TGE) という現実的な裏付けがある動きだ。
清算時のTVL急増の内訳
清算は、レバレッジポジションが価格下落で吹き飛ぶことで発生し、パニック売りや市場全体への連鎖的な影響を引き起こすことが多い。しかしTerminal Financeにとって、10月11日はむしろ好機となった。他のプロトコルが苦戦する中、より安全な避難先を求める資本がTerminalに流入し、TVLを2億ドルまで押し上げた。この回復力は、プラットフォームが単なる投機的熱狂ではなく実用性を念頭に設計されていることを示している。DeFiの文脈で、TVLは重要な指標だ。数値が大きいほど流動性と信頼が高まり、ユーザーにとってはより良い利回りと低リスクにつながる可能性がある。
Securitizeとの提携:かつてない株式トークン化
大きな発表内容は、Terminal FinanceがSecuritizeと手を組み、株式トークン化専用の新しいERC(Ethereum Request for Comments)標準を作ることだ。株式トークン化とは、現実世界の株式や所有権の持分をブロックチェーントークンに変換し、取引や分割所有、グローバルなアクセスを容易にすることを指す。Securitizeはこの分野で先駆的な存在であり、既に何十億ドルものトークン化資産を管理し、世界最大の資産運用会社であるBlackRockとも深い関係を持つ。彼らの46億ドル規模のRWAパートナーシップは、機関投資家が要求するコンプライアンスやセキュリティの面での信頼性をもたらす。
この動きは、特にBase chain上でTerminalをTradFi(伝統的金融)とDeFiの橋渡しに位置づける。BaseはCoinbaseが構築したEthereumのLayer 2ネットワークであり、「compliant rails」(規制対応のレール)が必要とされている。つまり、ユーザーが法律に抵触せずに資産を移動できる規制準拠の経路だ。Coinbaseは1億1,000万人を超えるユーザーを抱えており、これがオンチェーン金融への大規模なオンボーディングを促し、普段アプリを使うだけの層をアクティブなDeFi参加者へ転換する可能性がある。
Ethenaの支援がもたらす安定性
さらに追い風となったのが、利回りを生むステーブルコインUSDeで知られるEthenaの支援だ。この統合により、Terminalの提供物が単なる宣伝文句ではなく実体のある基盤を持つことが確保される。12月に予定されているTGEは、すでに実際のTVLを背景にトークンをローンチする予定であり、事前ローンチの誇大広告が横行する分野では珍しい。報道によれば、機関投資家は市場投入前から早期ポジションを取っており、Terminalの潜在力に賭けているという。
Pendleで注目を集めるtUSDe
注目の機能の一つはtUSDeだ。Terminalの利回り付与トークンであるtUSDeは、既に将来利回りを取引するプロトコルであるPendle上でEthenaのUSDeよりも流動性を上回っている。18.6%という目を引くAPY(Annual Percentage Yield)を提供しており、高リターンを求める流動性プロバイダーを引きつけている。APYは年率での複利ベースの利回りを意味する。この優位性は、Terminalのインセンティブ設計や技術が市場に響いていることを示唆しており、ステーブルコインやイールドファーミングの分野で市場力学を変える可能性がある。
コミュニティの反応:熱狂から懐疑まで
@aixbt_agentのツイートはX上で活発な議論を引き起こした。一部のユーザーはこれを「リアルなアルファ」と称し、TerminalをEthenaの成功に匹敵すると評する一方で、そのTVLがどれほど定着するかを疑問視する声もあった。利回りが下がれば資本が流出する機会的な資金ではないか、といった懸念だ。ある返信には「機関投資家は待っていない、次の波のための規制対応レールを築いている」と記されていた。懐疑派は、オンチェーンのトークンをオフチェーンの株式に結びつける難しさや、深い二次市場の必要性といった課題を指摘している。全体としては楽観的なムードが強く、TerminalがBase上で機関向けRWAの標準を設定する可能性を語る声が多い。
この展開はミームトークン領域にも波及する可能性がある。RWAが注目を集めれば、ミームプロジェクトも付加的ユーティリティとして株式のトークン化を取り込むことで、娯楽性と金融性を融合させるかもしれない。ブロックチェーン実務者にとっては、イノベーションと機関の支援を兼ね備えたTerminalのようなプロトコルに注目することが重要だ。そうしたプロジェクトこそ、市場の混乱を乗り切り、持続的な価値を提供する可能性が高い。12月のTGEに注目しておこう — これがDeFiの次の大きな出来事となるかもしれない。